イタリアの後期バロックにおいて今日最も有名なのはアントニオ・ヴィヴァルディ(1678年 - 1741年)だろう。彼の作曲活動はオペラやオラトリオを含む多くのジャンルにわたっていたが、特に協奏曲に彼の独自性が現れている。ヴィヴァルディの協奏曲では、トゥッティ(全奏、tutti)部分とソロ部分の対比が合奏協奏曲よりも明確となり、独奏楽器の技術を誇示するような傾向がより強まっている。ヴィヴァルディによって急-緩-急の3楽章形式の協奏曲形式が確立され、この形式は以降古典派、ロマン派にまで受け継がれていくことになる。
この時期のイタリアの作曲家たち、たとえばドメニコ・スカルラッティ(1685年 - 1757年)、ジョヴァンニ・バッティスタ・サンマルティーニ(1698年 - 1775年)、ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ(1710年 - 1736年)、ドメニコ・アルベルティ(1710年頃 - 1740年)などは、年代的には「後期バロック」に位置しながら、作曲技法においては既に古典派音楽の特色を多く有しており、この時期のイタリア半島の音楽はすでに古典派に移行しつつあったといえる。
フランスではジャン=フィリップ・ラモー(1683年 - 1764年)がフランス風のオペラの伝統を継承し、いくつかのオペラ=バレ opéra-ballet や音楽悲劇 tragédie en musique を残した。ラモーはクラヴサン音楽の分野でも重要な足跡を残している。オペラにおけるレシの様式はほぼ完全にリュリ以来の形式に則しており、クラヴサン音楽においても形式上はフランス風音楽の伝統の上に立っているが、オペラにおける序曲等の器楽やクラヴサン音楽にはギャラント様式や古典派の先駆と見られるような特色も数多く現れる。理論家としても有名で、機能和声についての最初の体系的な理論書を残した事で知られる。
ドイツでは、中期バロック期に作られたドイツ風の音楽に加えて、イタリアやフランスの新しい音楽の潮流がどん欲に取り入れられ、「趣味の融合」が本格的に行われていく事になる。そのような潮流を代表しているのがゲオルク・フィリップ・テレマン(1681年 - 1767年)である。彼はこの時期のドイツにおいて同時代人から最も評価の高かった作曲家であり、多作な事でも知られる。テレマンは、イタリア、フランスの最新の様式を取り入れた事で知られており、器楽の分野ではトリオソナタ、協奏曲、フランス風管弦楽組曲など幅広い種類の音楽を多数作曲した。また多数の教会カンタータやオラトリオも残している。
イギリスでは植民地経営によって経済的に潤うと多くの富裕市民があらわれ、18世紀には市民の間でオペラの人気が非常に高まった。ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685年 - 1759年)はイギリスで活躍したドイツ生まれの作曲家である。ヘンデルが活躍したのは主にオペラやオラトリオの分野であり、これらはつねに当時流行のスタイルで書かれていた。オペラ作品は概してイタリアオペラの書法に則ってはいたが、序曲や舞曲に関してはフランス風の音楽の影響も見られる。美しく、わかりやすいメロディーでロンドン市民に大いに親しまれたが、パーセルに見られたようなイギリス独特の要素はほとんど見られなかった。
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685年 - 1750年)は、西洋音楽史上、最も重要なバロック音楽の作曲家と考えられてきた。多数の教会カンタータ、鍵盤音楽、室内楽を残した。協奏曲や室内楽などではテレマンと同様当時のヨーロッパで流行していた様式に則った音楽を作った一方で、バッハのフーガに見られる対位法への傾倒は同時代人からは反時代的なものとして評価されたようである。またバッハはオペラを全く作曲しなかった。ドイツ中心の音楽史観の影響の下、数多くいるバロック時代の音楽家の中で、ともすると彼一人過大に評価されがちであるが、これまでに述べてきた初期バロックから彼の同時代へと至るバロック音楽の各時代の様式をバッハは熟知しており、それらを高度に駆使して自らの作品に反映させたという点では、バロック音楽を集大成した作曲家とみなすことができる。
忘却と再生 [編集]
バロック音楽から古典派音楽への推移を、対位法的なものからホモフォニックなものへの転換と見るならば、バロック音楽それ自体が同様の推移をたどっており、バロック音楽といわゆる古典派音楽の境界を明確に線引きする事は難しい。連続的な趣味の変化に伴って、過去の遺物となったバロック時代の音楽は18世紀後半にはほぼ完全に忘却された。
ロマン派期になると、メンデルスゾーンによるバッハのマタイ受難曲の「再発見」に象徴されるように、バロック時代の音楽へと興味が向かうようになり、作品にバロック風の味付けを施す作曲家もいた(たとえばブラームスやマックス・レーガーなど)。また、19世紀末から20世紀のフランスの音楽家たちも、バロック期の音楽に興味を抱き、その形式の一部を模倣するような作品を作っている(たとえばドビュッシーの「ラモー賛 Hommage à Rameau」やラヴェルの「クープランの墓 Le tombeau de Couperin」など)。
20世紀前半を通してバロック音楽への関心は持続された。やがて、バロック時代には現代とは異なる楽器が使用されていた事が、特に鍵盤楽器に関して注目を引き、チェンバロの復興が行われたが、当初は、チェンバロへの様々な誤解がある上に、ピアノ製造の技術を流用して作られた事などからこれらは今日では(逆説的にも)モダン・チェンバロなどと呼ばれている。1970年代から、バロック(以前)の音楽の演奏に際しては、博物館や個人の収集で残されている同時代の楽器(オリジナル楽器)や、それらの楽器の忠実なレプリカ(ヒストリカル楽器)を使用し、同時代の文献などによって奏法研究を行うことで徹底的にバロック期の音楽を再現しようとする動きが活発になった。このような潮流を古楽運動とよび、このような観点で用いられるオリジナル楽器やヒストリカル楽器を古楽器と呼ぶ。バッハなどの一部のバロックのレパートリーはピアノなど現代の楽器で演奏され続ける一方、本項目に現れた作曲家の多くは、ことごとくこの古楽運動の中で「再発見」された事情もあって、今日のバロック音楽の演奏実践では古楽器による演奏が大部分を占めている。
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